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「ああ……。そう……。でも、その物語のお姫様って、目覚めたら無理矢理キスされてるんだよね?目の前に知らない男の顔があるって、けっこうな恐怖体験だと思うよ。僕でさえあの時、キスしてるのが涼クンだってわかるまでかなり怖かったし……。」 「え……。い、いや、でも初めてのキスの相手と結ばれるとか、ロマンティックだろ?」 「そう…だね。僕は……たしか…五歳くらいのとき…花音ちゃんにチュってされたのが最初かなぁ……。」 「はっっ!?えっ!オレだろ!?オレがしずきのファーストキスの相手だよね?!」 衝撃的過ぎて、おもわずしずきの顔を両手でがっちり掴んでしまっていた。 「んー。あのころ花音ちゃんはいつも皆にチュウしてて、僕も涼クンも時々されてた。それで、涼クンも真似して僕にチュウし始めたんだよね。」 そう言われて、オレの脳裏にスパン!と当時の光景が蘇った。 「か…花音!そうだ!アイツ小ちゃい頃、超キス魔だった!クソっ今はお上品ぶってるくせに、とんでもないアバズレじゃないか!」 「え…アバズレって、そんな、保育園児だし……。ちなみに、下の妹の風(ふう)ちゃんにもキスされたよ。キス大好きな家系なんだろうね。」 くっ…。まさかの、風まで!!! 『ヒメたん』はお姫様で、ヒメたんにとっての王子様はオレだから、初めてのキッスも当然オレで『素敵な王子様のキスで目を覚まし』て『二人は恋に落ち』て『結婚しましたとさ、めでたしめでたし』の部分は初エッチってことで『二人の愛の物語』は完璧だって思ってたのに、まさかかなりの初期段階から物語(ストーリー)が破綻していたとは! 『二人の愛の物語』を完成させるってのがオレの長年の夢だったんだ! こんなことで諦められるか! 「そういうことで、しずき、オレのお姫様改め、オレの『赤ずきんちゃん』になるのと、オレの『ビューティ』になるのとどっちがいい? 「え…何が『そういうことで』…?それに…できればどっちも遠慮したい。」 「うーん、ちょっとイメージしづらい?じゃ、ワイルドな狼にパックン食べられちゃうのと、ビーストに荒々しく愛されるのと、どっちがいい?」 一瞬、狼vsクマとか、ビーストvsグリズリーなんて思ってしまったけど、違う違う。 「どっちも、いやだ。変な『ごっこ遊び』はちょっと荷が重いよ。」 「……!しずき、そっか、わ、わかった!」
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