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「満足か」
「満足さ」
そう言うと、おじさんは肩を竦めた。その様子に、僕は思わず苦笑する。
「ねえ、おじさん」
「なんだ」
「どうして、待ってくれたの」
墨染めの衣から鎌を取り出し、おじさんはにやりと笑う。
「なあに、単なる気まぐれさ。ただ」
「ただ?」
「その時に、何を望むのか、それが気になった」
「……そう」
「それなのに、お前が望んだものと来たら」
「不服そうだね」
「そりゃあそうだ」
おじさんは口の端に笑みを浮かべた。それがあんまりにも苦々しい笑いだったので、何だか申し訳ない気分になる。
どうやら僕は、ご期待に沿えなかったらしい。
「――わからんな、まったく、人間というやつは」
呆れたように呟く、死神のおじさんを横目に。
僕は。
しわくちゃの手でティーポットを傾けながら、密かに、笑った。
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