1イニング―交錯―

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放課後、俺は地元の図書館へ向かった。 ここなら昔の新聞や情報誌もあるだろうと思って探しに来た。 中学の時有名選手だったなら、きっと何かわずかでも藤木に関する情報があるはず。 「(あった、熱闘野球マガジンジュニア版。藤木の名前トップにあるじゃん、すげぇなやっぱ…)」 そこに書かれていた内容は、どれも藤木の輝かしい功績ばかり。 インタビューの内容だって、藤木がどれだけ野球に情熱注いでるかわかるコメントばかり。 「(『僕にとって野球は人生そのものです』…か。何だよ、それ…)」 だったらなんで 野球辞めちまったんだよ 読めば読むほど、わからなくなった。 「そういえば…」 藤木は3年生から名前を見なくなったって米田先輩は言ってた。 って事は、この雑誌の翌年の分を読めば何かわかるかも。 翌年1年分を読み漁ったが、藤木の名前が載ってるのは同じようにインタビュー内容と功績が書かれているだけだった。 けどある月から、藤木のインタビューコメントが少し変わってきているように見えた。 「(『上には上がいる』『自分はまだ未熟』『天才なんかじゃない』『自分なんて』……何かあったのかな、この時から)」 上には上がいる、か。 この時の何かがきっかけで、藤木は野球を辞めてしまったんだろうか。 「勿体ないな…」 雑誌を読んで気づくべきだった。 藤木が野球を辞めたきっかけは、この本の中に書かれていた事に。 でもこの時の俺には、気づきようがなかった。
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