1イニング―交錯―

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モヤモヤしながら図書館からの帰り道 ランニングしながら帰っていると、またあの高架下から音が聞こえてきた。 まさかと思って近づいてみたら、やはりそこには藤木の姿があった。 「……やっぱり、野球好きなんじゃん…」 俺はそのまま芝生に座り込み、藤木の投球をずっと眺めていた。 俺が見ている事も気づかず、ただひたすら藤木はボールを投げ続ける。 遠目から見てもわかる。 とても楽しそうに、藤木は何度もボールを投げた。 何球目だろう、疲れたのかボールをうまく掴めず手から零れ落ち 転がっていくボールを追いかけた拍子に、俺と目が合った。 「あ、やべ」 「またお前か…この間から何なんだよ」 「だって…お前の投球、見てて飽きないんだよ」 「おだてたって野球部には入らないぞ」 「わかってるよ。野球嫌いなんだろ」 「わかってるなら付きまとうな、鬱陶しい」 「でもさ!お前絶対野球好きじゃん!」 「嫌いだ」 「嫌いなやつがフォークの練習なんてするかよ」 俺がそう言うと、藤木は驚いた顔をした。 と同時に、もの凄い勢いで睨んでくる。 「いつから見てたんだよ」 「割としばらく。何度も指確認してたし、何かの練習だろうなとは思ってた。見ていくうちにフォークかなーって」 「最悪、見てんじゃねぇよ」 「見るぐらいいいだろ別に」 藤木は舌打ちして、俺を横切って去っていこうとした。 その瞬間、思わず腕をつかんでしまった。
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