1イニング―交錯―

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俺と悠太は顔を見合わせた。 「え、お前らマジに知らなかったの?」 「はい、初耳です…」 「中学の時散々騒がれてたやつだぞ?雑誌にだって載った事ある選手だったのに。試合あいつと当たったこととかねーの?」 「俺ら地元田舎の中学で、こっちの方じゃないんで試合で当たることはないです」 「ぁあそういやお前ら無名のポンコツ中学出身だったな」 「うるさいっすよ」 しかし驚いた。 あの藤木がまさか日本代表選手だったなんて。 それと同時にあの時の投球フォームに納得した。 「でもじゃあやっぱ、野球好きなんじゃ…」 「んー、どうだろうな。2年まではそれなりに活躍して名前あがってたんだけど、3年になった途端あいつ野球から離れたっぽいんだよね。急に名前見なくなったし」 「え、なんで?」 「俺が知るかよ。それこそ、野球が嫌いになったんじゃないの?つかそろそろ部活行くぞ。松永、お前はボール顔面キャッチしたんだからもう今日はボール触れると思うなよ。草むしりでもしとけ!」 「ぇえ!?マジっすか!!」 「当たり前。そんなんに気とられてるからヘマすんだろ。たるんでる証拠だばーか」 「そんなんって…ちぇ、わかりましたよ」 部活に向かう先輩の後に続き、部室から出ていきながらも 俺は藤木の事が頭から離れなかった。 そのあとの練習中でさえ、ずっと。 あいつは一体どんなプレーをするんだろう。 他にどんな球投げれるんだろう。 バッティングはどうなんだ。 なんて… だって、仕方ないだろ。 中学の時そんなすごい選手で あの時のあの投球を見てしまったら… 一緒に野球がしてみたい。 その感情がより強くなって、離れなくなっても仕方ないじゃないか。
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