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米田先輩がからかうように言う。
「こいつ藤木を野球部に入れたくて仕方ないみたいっすよ、柳さん」
「そんなんじゃないっすよ!ただ…その、もったいないって思っただけっす。あいつの投球、すごかったから」
からかわれたのにムッとし、反論すると柳先輩は驚いて身を乗り出してきた。
「え、まだあいつ野球やってたのか?」
「いや、それはどうかわからないですけど、高架下で壁当てやってて。俺それ入学式の前日に見かけて、だからてっきり野球部に入ると思ったのに、野球は嫌いだ、って言われちゃって…」
俺がそう言うと、柳先輩は驚いた顔をした後
少し悲しそうな顔をしながらそうか、と呟いた。
「柳先輩?」
「あー、いや、実は入学式の日に藤木には声かけたんだよ」
「え!?そうだったんですか?」
「まあな。理由は教えてくれなかったけど、ただもう野球をやるつもりはないとだけ言われたよ」
そういうと、柳先輩はさっきよりも寂しそうな顔をし
静かに部室のロッカーを閉めた。
いつの間にか帰り支度を終えるも、先輩はまだ帰る様子はなく
その場に立ち止まっていた。
藤木に対して、何か思うところがあるようだ。
「……何でなんでしょうね。野球を辞めたの」
「さぁな。でもボール触ってたって事は少なからず野球への興味はまだあるかもしれないな。あいつだって、松永と同じぐらい…いや、それ以上の野球馬鹿だったと思うし、そう簡単に野球への思いってのは消えないだろ」
「先輩やけに詳しいっすね。あいつの事」
「そりゃ何度かあいつと試合した事あるし」
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