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柳先輩のその一言に、俺は身を乗り出した。
「マジっすか!!あいつ、どんな試合したんです!?ポジションは!?やっぱりピッチャー!?先輩その時勝ったんすか!?負けたんすか!?」
「ちょ、近いって…」
気付かぬうちに柳先輩に近づいていったみたいで、腕で顔を押される。
慌てて離れると、柳先輩は軽く笑って質問の答えをくれた。
「強かったよ、あいつは。まだあいつが中学1年の時に試合したんだけど、あいつ1年のくせにバリバリレギュラー入りしてやがって、さすがにピッチャーってわけではなかったけど、あいつの守りは鉄壁だったし、打率も軽く3割。こんなやついていいのかよ、って驚きの連続だった」
柳先輩はその時の事を思い出しているのか、少し楽しそうな顔で話を続ける。
「へぇ…」
柳先輩が楽しそうに話すから、次第に俺の心音も上がってきてるのがわかった。
ヤバい、これは…本当にヤバい。
「こんな1年いてたまるか!って俺も悔しくてさ、9回裏2アウト1、2塁、俺たちが1点勝ち越しの守備側。ここ守り切れば勝ちって時に、その時バッテリー組んでたピッチャーに勝負かけろってサイン出したんだよ。ど真ん中ストレートで」
「え、すごいっすね!それ打たれなかったんすか!?」
俺と柳先輩の話を、いつの間にか他の部員達も食い入るように聞いている。
やっぱりみんな藤木の事興味あるんだ。
「打たれるわけねーだろ、って言いたいとこだけど…あいつ全部バット振るんだよ。ボールだろうがなんだろうが。結果はファールだったし、ヒットは1本だけだったけど…怖いのが、あいつは俺がストレート指示した事気づいていたって事なんだよな」
「それって、サインがばれてたって事すか?」
「いや、そうじゃない。あいつは計算して、俺たちを誘導してたんだよ。8回までは得意球はカーブですって見せかけて、ストレートわざと全部外して…僕はストレート打てませんってフリしてたんだよ。してやられたよな」
「じゃあもしかしてその試合、柳先輩負けたんすか?」
「いや、試合には勝ったよ。俺が1年に負けるわけないだろ」
「はは…さすが」
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