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あれは今から8年前の事です。
暑い夏の出来事でした。
1か月後に出産を控えていた母親の体調があまり良くなくて、早めに入院する事が決まったんです。
父親もすごく仕事が忙しい時期で、それに加えて母親の事もあって手がいっぱいいっぱいで俺はちょうど夏休みという事もあって父方の祖母の家へ預けられることになったんです。
「いい子にしてるんだぞ。1日1回は電話するからな。ヒマができたらすぐに会いにくるから。」
「うん。」
「ばあちゃんのいう事をしっかり聞くんだぞ。」
「わかってるよ。もう何回同じこというのさ、父さんも早く帰らないと仕事あるんでしょ。」
俺が心配なのはわかるけれど何回も言い聞かせるように同じことをいう父親にうんざりしながらそう言いました。
「…わかってるよ。じゃあ、母さんよろしく頼む。」
「はいはい。美久(ミク)さんにお大事にと伝えといとくれよ。」
祖母はそう言って俺の横に立ちました。
そして『本当に大丈夫だろうか。』という表情を浮かべながらも祖母の家を後にした父。
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