・出会い

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それに、 「帰る場所も教えてくれなかったってことですか?」 と鈴がそう聞いた。 「はい。一度家の話をしようとしたら、本名の時と同じで言うのが嫌なんだと子供でも分かるくらいはぐらかされたので、それ以降聞きませんでした。また辛そうに笑う顔を見たくなかったんです。」 美馬はそう答えた後、 「…何か本当にすいません。質問されてもろくに答える事ができなくて。」 と、どの質問にも満足に答えられない申し訳なさに顔を下へ向けそう謝罪した。 そんな美馬に、 「美馬さん、顔上げてください。謝罪なんていりませんよ。質問にはしっかり答えてくれていますから。『わからない』とそのわからない理由を答えてくれるだけでそれが貴重な情報につながる事もあるかもしれないんですから。」 と声をかける悠。 その横では同意するように鈴も頷いていた。 そして、 「そうですよ。だから何も申し訳なく思う必要はないんです。どんな答えでも答えてくれるだけで良いんです。」 とにっこりと笑って鈴が言った。
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