第一章

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 あ、人生終わったわ、これ。  カティは父親に生まれ育った村から連れ出された先で、いかにもカタギでない男たちの前に引き出されながら、そう思った。  ずっと干魃続きで畑にろくな収穫もなく、国は長く戦争しているから助けもあてにならない。  口減らしにされるのなら次は自分だろうな、とは薄々感じてはいたが、と脳裏に一月程前強引に冒険者になれと家を出された兄の顔が浮かぶ。  冒険者になれと言っても、元々鍬や鉈しか手にしたことのない村人が1人でやっていけるわけがない。  ただの口減らしに追い出されただけだ。  で、今度はカティの番。  しかも父母は追い出すだけでなく、カティを売って金を得ようとしているらしい。 (まあ、一応覚悟はしてたけどね)  ちょっと早くないか?  と思うのだ。  食い扶持が1人減ってまだ一月なのに。  その一月も環境は改善することなくひどくなるばかりだったから、仕方ないのだろうか。  納得はもちろんできないけど。  父はカティを男たちに引き渡すと金の入っているのだろう小さな布袋を受け取り、いそいそと去って行った。  カティはというと奴隷商の男たちに両手を縄で括られ、馬車に乗せられる。
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