scene.11

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「だから、あなたがどんなにこいつを好きでも、気持ちを無視するようなやり方はしないでもらいたい」 「斎…」 斎を見上げる。 その真摯な眼差しに、泣いてしまいそうになった。 そうだ、斎は嘘なんてつける人間じゃない。 彼女という特別な存在でなくても、私を大切にしてくれていることは、紛れもない真実なんだ。 私は泣くのを堪えるように、斎の手をきゅっと握り返す。 「…わかりました。僕も、香月さんの気持ちを無視する気なんてありません」 門倉君がそう言うと、斎は小さく頷いた。 そして、今度こそ立ち去ろうとした時、またもや門倉君に呼び止められる。 「でももし、香月さんの気持ちを無視するようなことをしたら?」 その問いに、斎はゾッとするような鋭利な視線を門倉君に向けた。 そんな斎を見て、門倉君の顔色が変わる。 「それは自分で考えるんだな」 「…」 呆然と立ち竦む門倉君をその場に残し、斎は私の手を引いて、急ぎ足で立ち去った。 私は斎のスピードに遅れないようにするだけで精一杯で、息を切らしながら斎を追いかける。
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