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確か小学校に上がったばかりの頃だったか…お互いの両親と一緒に斎と初詣に来て、嬉しくてはしゃいでいた私は皆とはぐれてしまった。
辺りを見回しても、見知った顔はなくて、急に心細くなる。
迷子になった私に気付き、声をかけてくれる大人もいたけれど、知らない人というだけで怖くてたまらなくて、私は逃げ出した。
すると、辺りはますます知らないところになっていて、人気もなく、暗くて何も見えない。
この世にたった一人になってしまったかのような錯覚を起こし、私はたまらずしゃがみこんでしまう。
怖くて怖くて、そのまま動くことができない。
そんな時、大声で私の名を呼ぶ斎の声が聞こえたんだ。
私は叫ぶように斎を呼んで。
斎の姿が見えた途端、火がついたように泣き出した。
それまで、あまりの恐怖に、泣くことさえ忘れていた。
斎はわんわん泣きわめく私の頭を、ポンポンと優しく撫で、私を必死に宥めてくれた。
「…怖くてたまらなくて、泣くことさえ忘れてたの」
「…そうか」
呟くようにそう言った私の頭に、斎はそっと手を乗せる。
そして、軽く一度だけ、ポンと撫でた。
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