scene.11

17/18
前へ
/18ページ
次へ
確か小学校に上がったばかりの頃だったか…お互いの両親と一緒に斎と初詣に来て、嬉しくてはしゃいでいた私は皆とはぐれてしまった。 辺りを見回しても、見知った顔はなくて、急に心細くなる。 迷子になった私に気付き、声をかけてくれる大人もいたけれど、知らない人というだけで怖くてたまらなくて、私は逃げ出した。 すると、辺りはますます知らないところになっていて、人気もなく、暗くて何も見えない。 この世にたった一人になってしまったかのような錯覚を起こし、私はたまらずしゃがみこんでしまう。 怖くて怖くて、そのまま動くことができない。 そんな時、大声で私の名を呼ぶ斎の声が聞こえたんだ。 私は叫ぶように斎を呼んで。 斎の姿が見えた途端、火がついたように泣き出した。 それまで、あまりの恐怖に、泣くことさえ忘れていた。 斎はわんわん泣きわめく私の頭を、ポンポンと優しく撫で、私を必死に宥めてくれた。 「…怖くてたまらなくて、泣くことさえ忘れてたの」 「…そうか」 呟くようにそう言った私の頭に、斎はそっと手を乗せる。 そして、軽く一度だけ、ポンと撫でた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加