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「舞、杏奈ちゃんとの待ち合わせはいいの?」
母親の言葉にぎくっとする。
初詣は毎年杏奈と一緒で、今年ももちろんそうだと母は思っている。
しかし、杏奈は今、バリにいる。
「えと…あのね…」
今年は斎と一緒だということを、私はまだ母に話していなかった。
別に不都合がある訳でもないけれど、斎のファンである母に話すと、必要以上にはしゃぎそうで、なかなか言い出せなかったのだ。
しかし、今日は斎が迎えに来てくれることになっているので、どうしたってバレてしまう。
その時、インターホンの音が鳴った。
「あら、誰かしら?」
母親がインターホンの受話器を取る。
「え? 斎君!?」
驚いた顔で私を見て、目をぱちくりとさせた。
私は誤魔化すように笑って、急いで自分の部屋へコートを取りに行く。
「舞! 初詣、斎君と行くなんて言ってなかったじゃない!」
「ごめーん、急に決まったからー!」
なんで言ってくれなかったのよ、と不満顔を見せる母親に、手を合わせて頭を下げる。
だって言ってたら、大はしゃぎで構おうとするでしょ?
それはちょっと勘弁してもらいたい。
私はコートを羽織り、マフラーを巻き手袋をはめ、完全防備の状態で、外で待っている斎の元へ向かった。
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