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「香月さん!」
「え…?」
振り返ると、そこには一人の見知った男性が立っていた。
「会うのはあの時以来だね。久しぶり」
「え…あ…うん」
私の目の前に立っていたのは、あの時のダブルデートの相手、門倉貴志だった。
まさかこんなところで会うなんてと、私は動揺してしまう。
「門倉君…この辺に住んでたっけ…?」
おずおず尋ねると、門倉君はううんと首を横に振った。
「違うよ。香月さんに会えるかなと思って、来てみたんだ」
「…」
「香月さんに会いたくてさ。あの日からメッセージのやり取りだけで、全然会えなかったから」
どう答えればいいのかと途方に暮れる。
斎は私が呼び止められたことに気がついていないようだったから、そのまま迷子預かり所にあの子を連れて行っているはず。
今ここに斎がいないことが、とてつもなく不安になる。
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