scene.11

9/18
前へ
/18ページ
次へ
「香月さん!」 「え…?」 振り返ると、そこには一人の見知った男性が立っていた。 「会うのはあの時以来だね。久しぶり」 「え…あ…うん」 私の目の前に立っていたのは、あの時のダブルデートの相手、門倉貴志だった。 まさかこんなところで会うなんてと、私は動揺してしまう。 「門倉君…この辺に住んでたっけ…?」 おずおず尋ねると、門倉君はううんと首を横に振った。 「違うよ。香月さんに会えるかなと思って、来てみたんだ」 「…」 「香月さんに会いたくてさ。あの日からメッセージのやり取りだけで、全然会えなかったから」 どう答えればいいのかと途方に暮れる。 斎は私が呼び止められたことに気がついていないようだったから、そのまま迷子預かり所にあの子を連れて行っているはず。 今ここに斎がいないことが、とてつもなく不安になる。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加