183人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
課長は車を斜めに停めて、水しぶきを上げながら走って来た。
「どうして土下座なんか!!」
「ごめんなさい課長。ごめんなさい。私また五月さんを傷付けてしまいました」
雨と涙の区別がつかない程酷い降りの中に、課長も立ったままでいる。大量の水に邪魔されながらも、駐車場の僅かな灯りが彼の表情を拾う。
「傷付いたのは君だろ。どうしてそこまで」
「課長には幸せになって欲しかった」
見つめて答えると、体を抱き寄せられた。
「俺なんかの為に…そこまで馬鹿とは思わなかったよ」
冷たい唇が重なる。雨が入っても課長の口の中は熱かった。私も彼を求めた。
最初のコメントを投稿しよう!