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涼しかったのも、長くは続かない。どんどん体が暑くなる。ペットボトルも、とっくに空だ。
「………あれ?」
「どうした?」
「スマホ何処に置いたのか分からなくて」
「―――ほら」
課長のスマホで照らしてくれた。でもそれはつまり暗闇が消える事。課長の裸が暗がりで見えた。光を浴びてる私の裸は、もっとハッキリ課長の目に映った筈。
「あっ、ごめん、そうだった」
動揺の声で、明かりを消す。結局スマホは、自力で探し当てた。
「課長、ありましたよ」
「余計な事をして悪かった。一瞬で、よく見えてないから気にしないでくれ」
「気にしてませんよ。もうなんか、それどころじゃ……」
「おい、大丈夫か?」
「………座ってるのもキツい」
「少し横になってろよ。これを枕の代わりにして」
受け取ったのは、手触りで畳んだスーツと分かった。お礼を言い床に寝そべる。距離が掴めず、頭が課長の体のどこかに当たった。
「あ、すみません」
「いいよそのままで。楽な姿勢でいると良い」
床のひんやり感が気持ち良かったのも、束の間。呼吸の乱れる私に彼は言う。
「綾野さん、書類の入った封筒持ってたよな。ちょっと借してくれないか?」
何に使うんだろうと不思議に思いつつ、足元の鞄の側にあったそれを手渡した。
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