エレベーター・スキャンダル

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ふわっ、とぬるい風が吹いた。もしかして、扇いでくれてる? 「…気持ちは嬉しいけど課長が疲れるから、止めて下さい」 「男なら当たり前の事をしているだけだ」 直人ならこんな時、自分だけ涼もうとするだろう。初めて課長を格好良いと思った。 「…ありがとうございます。でも無理しないで下さい。課長が死んだら五月さんに謝りきれないから」 「縁起の悪いことを言うなよ。死なないよ。明日の朝までの辛抱だ」 そよ風に湿った肌を撫でられながら、彼を呼ぶ。 「課長?」 「ん?」 「結婚したら、すぐ子供欲しいですか?」 「何を唐突に。そうだな、俺も五月も若くないからそう遠い話じゃないだろうな」 「二人の子供ならきっと……可愛い……子が…」 意識が遠くなる。しっかりしろと声を掛ける課長の手も、やがて止まった。パサっと、封筒の落ちた音を最後に、声も音も闇の中に消えた。
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