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「あなたは、心に闇を抱えています。体にもふつふつと湧き出ている」
「なッ、なにを」
変な意味じゃありません───と言って、静季は小さい”照魔境”を取り出した。
「これは、魔を映す鏡。あなたには妖気がまとわりついています」
なにかに、障ったんですね。
鏡には、昌平のまわりを、ごわりと黒い靄がほだされていた。
しばらく焔を見つめ、
「これも仏の御導きか」
と云った。
◆ ◆ ◆
変死───月弥が聞き返した。
「あァ。このところ、わが藩のまわりで、位の高い者たちがつぎつぎと殺されているのだ。おれら徒士はすぐさま身辺警護を委任されていた」
「で、どんな野郎だった」
「坊主だ。錫杖がじゃらりと鳴った瞬間、目の前にやつがあらわれ、気が付いたころには地面に突っ伏していた」
「目を覚ますと、仏になってたんだな」
「あァ、なぜか衣はずぶ濡れで、顔は青く、口には、貝が詰め込まれて」
貝ッ?
「そりゃ面白ぇ」
月弥がにたりと不気味に笑った。
「なにが面白いものか。おれらは三箇月の謹慎を食らい、小右衛門はみずからの非力に嘆いていた」
錫杖。
坊主。
貝。
北條は、腕を組んでいた。
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