17人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
◆ ◆ ◆
細長く四角い木の墓標が立ってある。
───『アカヒヒの墓』
そう刻まれていた。
墓標の下に、男は、酒を注ぐ。
男も、くいとそれを呑んだ。
すると、背中から
「みー」
「みー」
と、木陰の隙間にいる──獣ちいさな鳴声をとらえた。
男は、二匹を抱き上げ、ちいさな住処へ戻した。
「肚ァ減ったか?」
ほらよ──と、男は、クルミのひじき煮を与えた。
それは、たったひとりの“親友”が大好きだった、
故郷の料理──
「オメェらには、ちと贅沢すぎか」
酒瓶を、ぐいと傾ける。
木漏れ日が、男を射した。
久禮は、大樹にもたれて、一息ついた。
了
最初のコメントを投稿しよう!