第1話 【妖怪《ようかい》 瀬坊主《せぼうず》】

12/27
前へ
/141ページ
次へ
    ◆   ◆   ◆ 月影に浮かぶ7つの影。 「きさまら!!わしになにかあったら、我が藩主が(だま)っとらんぞ」 ()んだ空に、騒がしい怒号(どごう)(ひび)く。 耳鳴りがする。 「うっせ」 ずがんッ───と月弥が頭を殴った。 「おとりにするならテメェみてぇな職権(しょっけん)むさぼるヤロウが」 「かっこうのエサなわけだ」 「なるほどな」 「昌平ッ、きさまいま納得したな」 つい口走ってしまった。 「こいつらなんだ。いったいなにを企んでおる」 「尾張(おわり)さま、申し訳ございません。藩のためです」 「下手人がでりゃあすぐにでも解放してやるよ」 「しばし辛抱なさってください」 静季がやさしくなだめたが、 『尾張』をさらに逆なでした。 「ぬかせッ。この『尾張将監(おわりしょうげん)』、 なにひとつやましいことはしたことはない。 昌平、覚悟しておけ。この始末、どう責任を」 ずがんッ───と月弥が頭を殴った。  
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加