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「とにかく──オメェらここにいろ。絶対ェくるんじゃねぇぞ!」
ばちりと、襖が閉じた。
その世界は、ちいさな暗がりがぽつりと残っているだけだった。
◆ ◆ ◆
ふたたび月弥たちは、長屋にあらわれた。
月弥の瞳はまっすぐと、なにかを見つめている。
形容しがたい感情が、そこにあったのだ。
北條が、懐から一枚の札と御髪を取り出した。
咒を唱えると、白い煙を上げ、『尾張』があらわれた。
"式神"である。
「臭いをかぎつけすぐにでもやってくる」
「そうそう簡単にくるとも思えん」
「絶対、来る」
羅巌の予想は、意外と当たることが多い。
しばらくすると、淡い敷波にまぎれて、
どこからともなく、怒号のような声が聞こえた。
乾坤堂たちは、声のするほうへ向かった。
岸部に仁王立ちした、
昌平のすがただった。
「竹士郎!でてこい!この”臆病者”が」
昌平は叫んだ。
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