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「藩を棄て、あやかしへと成り果て、あろうことか関係のないものまで傷つけた貴様の所業、もはや万死に値する!同志であるこの俺が、親父殿にかわって斬り捨ててくれよう」
「あのバカなにやってんだ」
「おびきだそうとしているのさ」
さざ波が、ちいさく鳴いた。
背後に気配を感じた。
昌平は振り向く。
あの塩胡麻坊主がいた。
低く喉を鳴らしながら、じっと昌平を睨んでいた。
「竹士郎。おぬし、なにがあった。いや───もうよい。なにがあろうと、貴様のせいで、
多くの犠牲者が出た。問答は無用。小右衛門の苦しみを与えるに飽き足らず、貞吉どのにまで、襲い掛かる始末」
覚悟は───できているか。
すらりと鞘から刀を抜いた。
「でやぁ」
芒刃がきらめく。
竹士郎は、ひょいと背後にまわり、背中を蹴り飛ばした。
昌平はつっぷす。すぐさま態勢を整え、斬りかかる。
その刹那には、錫杖で頬をなぐられた。
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