第1話 【妖怪《ようかい》 瀬坊主《せぼうず》】

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    「藩を()て、あやかしへと成り果て、あろうことか関係のないものまで傷つけた貴様の所業(しょぎょう)、もはや万死に値する!同志(どうし)であるこの俺が、親父殿にかわって()り捨ててくれよう」 「あのバカなにやってんだ」 「おびきだそうとしているのさ」 さざ波が、ちいさく鳴いた。 背後に気配を感じた。 昌平は振り向く。 あの塩胡麻坊主がいた。 低く喉を鳴らしながら、じっと昌平を睨んでいた。 「竹士郎。おぬし、なにがあった。いや───もうよい。なにがあろうと、貴様のせいで、 多くの犠牲者(ぎせいしゃ)が出た。問答(もんどう)無用(むよう)。小右衛門の苦しみを与えるに飽き足らず、貞吉どのにまで、襲い掛かる始末」 覚悟(かくご)は───できているか。 すらりと(さや)から刀を抜いた。 「でやぁ」 芒刃(ぼうじん)がきらめく。 竹士郎は、ひょいと背後にまわり、背中を蹴り飛ばした。 昌平はつっぷす。すぐさま態勢(たいせい)を整え、斬りかかる。 その刹那には、錫杖で頬をなぐられた。  
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