第1話 【妖怪《ようかい》 瀬坊主《せぼうず》】

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    むくりと立ち上がるが、ふたたび竹士郎に(あご)()られた。 昌平は昏倒(こんとう)した。 しかし、意識をなんとか震い戻し、立ちあがる。 「どんな(うら)みがあって、そのようなすがたに成り果てた」 ぐほッ───昌平はみぞおちを錫杖で殴られた。 ふらふらになりながら、ふたたび立ち上がる。 「そうなるまえに、どうして───おれに一言でも云ってくれなかった」 両腹に貝の鋭利(えいり)(やいば)がかすめた。 「おなじ(かま)の飯を食い……おなじ屋台で酒を酌み……おなじときを歩んできた”仲間(なかま)”じゃないかッ!!」 半紙(はんし)に落とした墨汁(ぼくじゅう)のように、どくどくと血がにじむ。 「信念(しんねん)は違えど───ともに心を許したのだから」 錫杖が、昌平の脳天に向かった。 「貴様は死んでも、おれの仲間(なかま)だァッ!!」 ぴくり、と錫杖が止まる。 「?!?」 腕が震えている。死神の眉間(みけん)がゆがんだ。 「ア……アア…エ」 ぎこちなく鳴いた。 瞬息(しゅんそく)───『尾張』が竹士郎のおぶさった。 竹士郎は、必死に振り払おうと、抵抗する。  錫杖の刃が、『尾張』を貫いた。 「尾張さまッ!!」 昌平が瞠目(どうもう)するとどうじに、『尾張』が煙となって消えた。  
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