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むくりと立ち上がるが、ふたたび竹士郎に顎を蹴られた。
昌平は昏倒した。
しかし、意識をなんとか震い戻し、立ちあがる。
「どんな恨みがあって、そのようなすがたに成り果てた」
ぐほッ───昌平はみぞおちを錫杖で殴られた。
ふらふらになりながら、ふたたび立ち上がる。
「そうなるまえに、どうして───おれに一言でも云ってくれなかった」
両腹に貝の鋭利な刃がかすめた。
「おなじ釜の飯を食い……おなじ屋台で酒を酌み……おなじときを歩んできた”仲間”じゃないかッ!!」
半紙に落とした墨汁のように、どくどくと血がにじむ。
「信念は違えど───ともに心を許したのだから」
錫杖が、昌平の脳天に向かった。
「貴様は死んでも、おれの仲間だァッ!!」
ぴくり、と錫杖が止まる。
「?!?」
腕が震えている。死神の眉間がゆがんだ。
「ア……アア…エ」
ぎこちなく鳴いた。
瞬息───『尾張』が竹士郎のおぶさった。
竹士郎は、必死に振り払おうと、抵抗する。
錫杖の刃が、『尾張』を貫いた。
「尾張さまッ!!」
昌平が瞠目するとどうじに、『尾張』が煙となって消えた。
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