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ぱたぱたぱた。
ぱたぱたぱた。
月弥は、瀬坊主に向かって、その煙を送り込んだ。
瀬坊主は悶えに悶えた。
なんども首を左右に振らせながら、威嚇とも怒りともとれる顔色で、月弥たちに食って掛かろうとしている。
というよりは、鯵のほうに気がいってるのかもしぬ。
全身をばたつかせ、ぎゃぉぉぉと叫ぶ。
すると、瀬坊主の口のなかから、ぐろろろろと、気体が出てきた。瀬坊主は白目になり、全身を痙攣させた。
「た、竹士郎ッ」
「でてきたぞッ」
気体は、ひとつの獣のかたちになると、そのすがたをあらわにした。
それは全長1メートルはあるかという──
『大獺』だった。
「こいつが瀬坊主の正体」
「竹士郎どののからだに入って操っておったのだ」
逃げるッ───羅巌が叫んだ。
カワウソは、七輪の網の上に乗った鯵をくわえ、びょんと前進する。
一陣。光。一線。
「照魔鏡!!」
神気に満ちた光線が、カワウソの目を潰した。
「静季ッ」
月弥は瞠目した。
影。がごんという鈍い音。
どたり───影が倒れる。
カワウソがその影に阻まれ、腕に食らいついていた。
「『尾張』どのッ」
「こんの……バケモノッ」
本物の『尾張』は、眉に渓谷を伴っている。
「今じゃッ!!」
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