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灰色の会議室───。
締め切られた空間のなかで、ふたつのちいさな影が浮かぶ。
けたたましい罵声。
部長「説教っぽくいうわけじゃないけどさ」
社員「はい」
部長「もうちょっと、自覚してくれないかな?子供じゃないんだから。ある程度やらなくちゃいけないことぐらいわかるよね。把握しなくちゃ。だれもこんなことまで教えてくれる人いないぞ?新卒でわからないことだらけだろうけどさ。わからないことあればきちんと聞かなくちゃ」
社員「はい」
醜く開かれた黄色い歯が彼を嘲る。
帰宅後───
鞄とスーツの上着をすぐさま捨て、そそくさと二階へ上がる。
母「おかえり。ごはんは?」
社員「もう寝る」
冷たい扉が絞められた。
暗澹の世界に、
黒いカタマリがうずくまる。
ぽつり───と白い光りが浮かび、
そこから彼の顔が、死人のように浮かび上がった。
死んだ魚のような瞳で、彼はスマホのアプリをのぞいていた。
アプリ検索ワードに、彼はこう打っていた。
「自殺」
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