第1話 【妖怪《ようかい》 瀬坊主《せぼうず》】

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  下衆(げす)が。 早うこの男から即刻称号(そっこくしょうごう)剥奪(はくだつ)したいと、昌平は、酒瓶をぎちりと握りしめた。 すると突然、じゃらり、と空に鳴った。 「ん?」 「どうした」 「いまなにか」 じゃらり。 「錫杖(しゃくじょう)」 「乞食(こじき)がうろついておるのだ」 と、袖依が云った。 風が鳴る。 「肌寒い。おい、酒をよこせ」 「あ、はい」 じゃらり───音が、近い。 刹那、目の前に、なにかが顕現(けんげん)した。 判別するいとまもなく、昌平はなにかに(ほほ)を叩かれ、いきおいよく横に倒れた。 「何奴ッ」 徒士のひとりが、すぐさま斬りかかる。 がちり、となにかが防いだ。 「錫杖───此奴ッ」 どどっ───となにかに押され、数メートルさきまで吹っ飛ばされた。 袖依の頬に、飛沫(しぶき)がかすめた。 ───(みず)ッ。
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