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下衆が。
早うこの男から即刻称号を剥奪したいと、昌平は、酒瓶をぎちりと握りしめた。
すると突然、じゃらり、と空に鳴った。
「ん?」
「どうした」
「いまなにか」
じゃらり。
「錫杖」
「乞食がうろついておるのだ」
と、袖依が云った。
風が鳴る。
「肌寒い。おい、酒をよこせ」
「あ、はい」
じゃらり───音が、近い。
刹那、目の前に、なにかが顕現した。
判別するいとまもなく、昌平はなにかに頬を叩かれ、いきおいよく横に倒れた。
「何奴ッ」
徒士のひとりが、すぐさま斬りかかる。
がちり、となにかが防いだ。
「錫杖───此奴ッ」
どどっ───となにかに押され、数メートルさきまで吹っ飛ばされた。
袖依の頬に、飛沫がかすめた。
───水ッ。
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