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影はじっと袖依を見た。
「き、ききき貴様ッ。我が真田藩士・袖依是助と知っての狼ぜガッ」
袖依の全身は硬直し、無規則に手足をばたつかせ、
ついにはどさりと後ろに倒れた。
じゃらり、ふたたび錫杖が鳴り、昌平は目を覚ます。
薄ぼんやりとした視界のなかに、ちいさくなる影をとらえた。
「坊───主」
昌平につづき、もうひとりの徒士が目覚めた。
倒れた袖依に近づくと、
死骸がのさばっていた。
袖依の顔は、苦悶に満ち果て、
口には大量の貝が詰め込まれていた。
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