第1話 【妖怪《ようかい》 瀬坊主《せぼうず》】

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  影はじっと袖依を見た。 「き、ききき貴様ッ。我が真田藩士(さなだはんし)・袖依是助と知っての(ろう)ぜガッ」 袖依の全身は硬直(こうちょく)し、無規則(むきそく)に手足をばたつかせ、 ついにはどさりと後ろに倒れた。 じゃらり、ふたたび錫杖が鳴り、昌平は目を覚ます。 (うす)ぼんやりとした視界のなかに、ちいさくなる影をとらえた。 「坊───主」 昌平につづき、もうひとりの徒士が目覚めた。 倒れた袖依に近づくと、 死骸(しがい)がのさばっていた。 袖依の顔は、苦悶(くもん)に満ち果て、 口には大量の貝が詰め込まれていた。  
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