第1話 【妖怪《ようかい》 瀬坊主《せぼうず》】

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  ◆   ◆   ◆ 「だいたいあなたがたには、計画性(けいかくせい)というものがないんですか?」 期待もしない甲高(かんだか)い声が、空に響いた。 「血を流す樹木(じゅもく)退治(たいじ)してくれという依頼のはずなのに、どうして依頼主の工場が爆発で木端微塵(こっぱみじん)にならないといけないのですかっ」 (さわ)がしい。 乾坤堂(けんこんどう)のメンバーに勝手になった『貞吉(さだきち)』である。 彼は、立派な(さむらい)となるために加入した。 『乾坤堂』とは、(ぜに)悪鬼妖怪(あっきようかい)の類を伐魔修祓(ばつましゅうばつ)せし集団である。 しかし、これといった基準はなく、報酬(ほうしゅう)は、各メンバーの気分しだい。 といっても、ほとんどの采配(さいはい)は、リーダーである『月弥(ツクヤ)』にある。 そして、その気分によって、依頼主にもなにかしら(こうむ)りがあることもしばしば。 「っせぇな。まずおめぇごときがエラソーに口はさむな」 耳をほじくりながら、月弥が云った。 「貞吉くんは、今回もただ騒いでいたな」 と、つづいて”封滅師(ふうめつし)”の『北條潤一郎(ほうじょうじゅんいちろう)』が()った。 「そういえば、いつもそうですよね」 ”神鏡使(しんきょうつか)い”の『静季(しずき)』が、嬉々(きき)とし、 「いつもいつも」 と、剛腕鋼鉄(ごうわんごうてつ)の『羅巖(ラガン)』が云った。 これに加え、絡繰(カラクリ)発明ジジイ『与作権兵衛(よさくごんべえ)』を含めた6名が、『乾坤堂』である。  
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