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「あの樹に憑いてた妖気は、あの依頼主の血筋を憎む娘だ。だよな、静季」
「ええ。奴らの謀略にはめられ、土地を追われ、一家は飢え死にし、残ったのは娘とその妹」
「なんとか助けてもらおうと、直談判した一家の娘は、ついには奴らに殺され、あの樹の下の土に埋められた」
「だから毎夜、あの樹、血の涙、ながした」
───だからあいつらのかわりに俺らが天誅を降した。文句あっか。
「いや、同情はしますよ。でも!われわれの依頼主は、あくまであの製材工場の社長ですよ!金をもらっている以上、あいつらのいうとおり」
「金なりゃ言いなりにになるようなとこなら、その辺のクズ下請に頼め」
「われらは乾坤堂だ。ただの退治屋じゃない」
「貞吉さん、葬られた闇に光を当てることが、私たちの仕事だと思うのですが]
「いや、静季さんのいうこともわかりますが、結果的に彼女は」
「成仏したよ」
え?───と貞吉は言った。
「おぬしがボッコボコにされとるあいだにな」
「なんですってぇぇぇええ!!」
「北條が見つけた一家の”墓土”と、人形(ひとがた)を使い、彼らの想いを彼女に伝えた」
───恨みを抱え、この世にとどまることの浅ましさに気が付いたのさ。
「最期にあいつは、涙を流して逝っちまったぜ」
浅ましい血なんかじゃねぇ、”希望の涙”をな。
「───そ、そうなんですか。あ、なんだぁ、じゃ僕は・・・」
貞吉は、なぜか心が軽くなり、おおきく一息ついた。
「殴られた甲斐、あった」
うしろから、羅巖が肩をぽんと叩いた。
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