第4話 【咆哮《ほうこう》 赤狒々《あかひひ》の山《やま》】

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    墨色(すみいろ)(やみ)不安定(ふあんてい)(つき)がひとつ。 ざささ、ざささ、ざささ。 (くさむら)を歩く音がよっつあった。 ざざ、ざざ、ざざ。 「(よわ)ったなァ。こりゃあお手上(てあげ)げだぁ」 「えーっ、どうしてくれんのよ!どうにかしてよ」 黒影(くろかげ)がふたつ。闇のなかに取り残されていた。 「どうしようもできねぇんだよ、こんな()暗道(くらみち)じゃ」 「お腹すいたぁー」 若いカップルのようだ。 「食料も底ついたし、これ以上先に進んだらキケンだ。 ここいらで野宿(のじゅく)するしか」 「アンタ馬鹿(ばか)ァ!?こんなところで野宿なんかしたら」 「火を焚けば安心だ。ライターも持ってるし」 「んもーっ」 「ところでよ、知ってるか?」 「なによ」 「この山──とてつもねぇ“バケモノ”が()んでるんだって」  
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