第1話 【妖怪《ようかい》 瀬坊主《せぼうず》】

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    見つめる静季。 (かげ)りのなかに(うる)(ひとみ)を見つけ、貞吉の頬が赤らんだ。 「でも───」 バカですよね!!静季が微笑んだ。 貞吉はうしろにひっくりかえった。 「意外ときっつ」 月弥が苦笑する。 「しかし、静季のいうことも一理(いちり)ある。あと二人、そのバカがいるのだからな」 そこには、横に()している小右衛門と、 その名を発した男が上半身裸で座していた。 二人とも筋骨隆々、精悍(せいかん)を絵にかいたような男たちだった。 「済まない。助けていただきなんと礼をしたらよいか」 若く、凛々しさが顔に(にじ)みでている。 しかし、顔色はすぐれない。 「おまえ、武士か」 「そうだ。申し遅れたが、おれは松代真田守家中(まつだいさなだもりかちゅう)」 ───『近藤昌平(こんどうしょうへい)』だ。 「お仲間、なにしたんだい」 月弥に瞳が、鋭く光った。 男は答えなかった。 「どうせお(かみ)にタテついて死にたくなったんだろ」 違うッ───男は床を拳で叩いた。 「じゃあなんだ?」 それは云えぬ───昌平は頭を垂れた。 「彼の尊厳(そんげん)愚弄(ぐろう)することになるからだ」 「自決する奴に、尊厳するほどの価値あるのか?」 「やめろ月弥。事情があるんだろう」 「私たちでよかったら、話していただけません?」 「しかし───」 ぱちぱちと、火の粉が昌平の頬をかすめる。 鈍い(ぬばたま)をまとう瞳の奥が沈んだ。 「私たち、妖怪退治を生業(なりわい)にしているんです」 静季が、昌平の足元に(ちゃ)を置いた。  
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