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放課後を告げる鐘が鳴る。
明日から夏休みを迎えるせいか、みんなどこかそわそわしていた。部活に行く人達は声を掛け合いながら、それぞれの部室に向かう。帰宅部の私は、いつものように教室で友達とのおしゃべりに花を咲かせる。
もともと、江崎美知香ちゃんたち3人がお友達同士だったところに、美味しいパンケーキ屋さんや、新作ジェラート、可愛いパフェなんかの話で盛り上がって、私もグループに入れてもらった形。
4月当初の席順が出席番号順で、美知香ちゃんと前後だったのが良かった。そうでなければ、接点がなかったかも。だって、美知香ちゃん達は3人は、みんなほっそりして可愛い。私は、だいぶ、ぽっちゃり。ちょっとコンプレックスだけど、みんなといると楽しいから、気にしないんだ。
誰それが何だとか、誰先生がどうしたとか、そんなたわいもない話題にケラケラと笑い合う。おしゃべりに夢中になって、喉がかわいてきた。教室は風が吹き抜けると気持ちが良いけど、少し汗ばむ気温。自動販売機の冷えたジュース、美味しいだろうなぁ。と、思うと、どうしても飲みたくなってきた。
「私、飲み物買ってくるね。みんなの分も買ってくる?」
「いいよいいよ」
「だいじょうぶ。いらなーい」
「いってらー」
教室を出て、階段の踊り場まで来た時に、お財布を持ってきていないことに気付いた。冷たいジュースに気を取られすぎちゃったようだ。引き返して、教室の扉を開けようとした時、中から聞こえてくる声にふと手を止めた。
「オリオリを私達のグループに誘って正解だったよねー」
オリオリというのは折笠詩織、私のことだ。喋っているのは美知香ちゃん。
「それな」
「デブが一人いると、ウチらが痩せて見えるもんね」
「何食べてもあそこまでは太らないでしょ、っていう安心感あるよね」
目の前がぐるぐるした。そんな風に思われてたなんて。なんで美知香ちゃんが声をかけてくれたのか、不思議に思ったこともあった。けど、友達だと思ってたのに。
私は、デブらしからぬ慎重な動きでそっとその場を離れると、トイレに篭った。気持ちを落ち着けようとしたれど、ぽろぽろと涙がこぼれ出た。
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