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それだけ言うと、背中を向けて両腕に力こぶをつくり、顔だけ振り返った。ドヤ顔だ。ウザい。
でも、3日に1度のトレーニングで良いというのは驚きだった。毎日つらい運動をするのは嫌だけど、休むのも必要というのなら、もしかしたら続けられるかもしれない。
「私にも、できるかなぁ……」
「お! 詩織も筋肉の良さに目覚めたか!」
「ええっと、筋肉は興味ないんだけど、ちょっと痩せられたら良いかなーって」
片付け物を終えたママは、お茶を淹れてひと休み。両手で包むように湯のみを持って、私達のやり取りをニコニコ眺めている。ちょっと恥ずかしい。パパはそんな機微には無頓着だ。
「何を言っている詩織! 痩せるにはまず筋肉を付けなきゃ。筋肉ってのは物凄く燃費が悪いんだ。そいつをガンガン動かしてカロリーを消費する! そうするとぜい肉が落ち、筋肉が付いて基礎代謝が上がる! 付いた筋肉を使ってさらに体をガンガン動かす! これが痩せるためのサイクルだ!」
「え、でも筋肉が付いたら太く見えちゃうし…」
「はっはっはっは。世の筋肉マニア達が自分の体をを2mm、1mm太くするためにどれだけ血の滲むような努力をしていると思っているんだい? 太く見えるほど筋肉が付いたら、そりゃ立派なことさ!」
そうなんだぁ。ダイエットってヨガとかストレッチとか、ゆったり動いて脂肪だけを落とすイメージだった。
「興味が湧いたなら、今ちょっとやってみるか?」
また違うポーズを決めて、クイックイッと筋肉を動かしている。興味は出てきたけど、ああはなりたくないなぁ。
「でもジャージ出すの面倒だし……」
「なーに、普段着で十分。どうせお風呂に入るだろ?」
「ご飯たべちゃって体おもいし……」
「じゃあ、いつならやるんだい? 何かをやらない理由を探しちゃダメだ。何をするにしたって、『いつか』じゃ絶対始まらない。何かをするのは必ず『今』なんだ!」
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