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人が寝ている姿を見るのは好きです。
心臓の音を聞くのも好きです。
肺の中に身を潜め、息遣いの振動を感じることも好きです。
赤の匂いを嗅ぎ、粘膜の肌触りを楽しみ、突き破る瞬間、彼方から聞こえる泣声を耳にします。
嗚呼、限りない悦び。
身体をうち震わせる風にときめきます。
月影に歌を染め、耳をすましてください。
夕暮れに追いやられたる鳥が、舞い降りて来るでしょう。
その透き通る翼で、秘めたる小箱の蓋を開けてください。
溢れ出る血汐を、わが盃に注ぎましょう。
その盃を口に含みながら、琴の音の流れに乗り、一人問うのです。
何者かと。
耳たぶを噛む、月灯り。
汝は名もなき花である、茎である、葉であると。
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