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手入れのしてない月桂樹の葉が、窓から垂れ下がる。
その葉の先を辿ると、月夜に浮かぶ月。
光が砕けて、さらさらと舞い、降り積もる。
「何、笑ってんの」
窓枠に寄りかかり、月桂樹に語りかける。
そういえば、長いこと水やりもしていないのに、随分と生き生きしているように感じる。
連日続いた猛暑の中、窓の傍で太陽の光を火傷するほど浴びているはずなのに。
生命力が強いのだ。
私と違って。
手にしたナイフが、月の光を反射する。
きらりと光るそれは、一筋の希望とも呼べるのかもしれない。
糸のように細いものに、これまで何度となく縋りついてきた。
しかし、そこに救いはなかった。
果てしなく広がる、荒れ果てた土の上、たったひとりで、自分の影を踏むしかなかった。
手首に刃を当てる。
こんなことで命は消えない事はわかっているのに、やめられない。
皮膚が破け、深紅の雫が滴り落ち、月桂樹の葉を濡らす。
葉の先から、涙のごとく、ぽとぽとと水溜まり。
水溜まりに浮かぶ、円い月。
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