侵食.26

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円い月を目指し、船を漕ぐ月桂樹の葉。 するすると茎を伸ばし、私の小指にたどり着く。 小指を一周し、薬指、中指、それから、手首へと進む。 破けた皮膚の隙間から、中へ入っていく茎。 恐ろしくはなかった。 むしろ、こうなることを待ち望んでいたのかもしれない。 蛇のようにくねくねと、皮膚をもりあげ、進んでいく。 腕から肩へ、背中へ、胸へ。 息苦しさを感じる。 おそらく、肺の中に侵入したのだ。 息を吸って吐くと、月桂樹の甘い香りと、ほのかな苦みを感じる。 粘膜を這う感触、壁を突き破る音、それを味わうことに夢中になり、痛みはむしろ快楽。 思わず吐息を漏らす。 太ももを、ふくらはぎを、足首を、くねくねと進む茎。 何かを探しているようだ。 あなたの探しているものは、ここにあるよ。 私は、手招きする。 ああ、そこにいたんだね。 いいの。人である事をやめられるの。 やめてやる。 もう、やめてやる。 彷徨った茎は、とうとう辿り着いた。 私の中の甘い花芯に。
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