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円い月を目指し、船を漕ぐ月桂樹の葉。
するすると茎を伸ばし、私の小指にたどり着く。
小指を一周し、薬指、中指、それから、手首へと進む。
破けた皮膚の隙間から、中へ入っていく茎。
恐ろしくはなかった。
むしろ、こうなることを待ち望んでいたのかもしれない。
蛇のようにくねくねと、皮膚をもりあげ、進んでいく。
腕から肩へ、背中へ、胸へ。
息苦しさを感じる。
おそらく、肺の中に侵入したのだ。
息を吸って吐くと、月桂樹の甘い香りと、ほのかな苦みを感じる。
粘膜を這う感触、壁を突き破る音、それを味わうことに夢中になり、痛みはむしろ快楽。
思わず吐息を漏らす。
太ももを、ふくらはぎを、足首を、くねくねと進む茎。
何かを探しているようだ。
あなたの探しているものは、ここにあるよ。
私は、手招きする。
ああ、そこにいたんだね。
いいの。人である事をやめられるの。
やめてやる。
もう、やめてやる。
彷徨った茎は、とうとう辿り着いた。
私の中の甘い花芯に。
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