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出勤の時間が訪れて、野蕗はそっと家を出た。
恋人の浮気なんか、疑いたくはなかった。けれども2人が腕を組んで歩いているのを見た時に、心の底からほっとしたのも事実だった。相手は間違いなくアルファだったので。
その反面、胸がざわついて調べ回ってみたり。こんな事をして苦しいだけだと分かっても、やめられない。自分で調べったってたかが知れていた。荷葉の浮気相手が誰であるか、正直な所どうだっていい。大事なのは荷葉を幸せにしてくれるかどうかだ。自分より笑顔にしてあげられること、時間を割いてあげられること。きりがない。他人が僕より出来ることといったら。
「やっぱり‥‥」
駅近くの路地に、探偵事務所がある。仕事の帰りに行ってみようか、とずっと迷っていた。
その日1日上の空で過ごし、結局、帰りにそのドアを叩いた。
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