3人が本棚に入れています
本棚に追加
ここからいなくなれ
俺は、まあ、つまらない男だろう。
誰かに指摘されなくても、自分で日々それを痛感してるんだから間違いない。
佐原比呂臣(さはらひろおみ)、今年で24。今は彼女もいないし、こいつはと言えるような親友の存在も浮かばない。
仕事は、小さな広告代理店で営業をほそぼそと。
就活のときはD社やH社狙いのつもりだったけど、現実はそんなに甘くない。
まあ、はっきり言って何の取り柄もないし、打ち込んできた趣味すら何ひとつ思いつかないんだからしょうがない。
流行ってるものはとりあえずやってみて、どんなものかひと通り理解できたくらいで飽きる。スポーツを見たり自分でやったりするのも、なんかいまいち盛り上がれない。
過去に何人か付き合った子もいたけど、たいがい数ヶ月後に浮気されて終了。未練もないからそれまで。
自分で言うのもアレだが、ホントに面白味のない人生だと思う。
そんな俺は、近年稀に見る厄日を過ごしていた。
仕事の契約を更新できず自棄酒した挙句、クライアントの資料がたんまり入ったタブレットを飲み屋に置き去りに…。どう考えても重大な情報漏えいの危機だ。
飲み屋に電話してみたけど、それらしき荷物は見当たらないと言う返答。
これはヤバい。
良くて何時間も上司に絞られる。悪ければ賠償金ものの大失態。
自分が悪い。
自分以外は責めようがない。
せめて何かに責任転嫁できたら、少しは気分的に楽になるんだろうか。
まあ、二日酔いで全く回らない頭を使ったところで、楽になる方法なんて出てくるわけもない。
最初のコメントを投稿しよう!