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「みつけなきゃだめなんだ」
「何のために?」
少年は少しうつむいた後、じっと俺の顔の見つめてきた。顔のパーツをひとつひとつ吟味しているらしく、目線が合わない。自分の秘密を話していい相手かどうか値踏みしてる感じ。
こんなとき、どんな表情をしたらいいものかもわからないので、できる限り真面目な顔をして二度うなずいてみた。
少年は一瞬目をつぶって、口を開く。
「…ぼくをかいぞうしてもらうため。ぼくはわるい子だから、いい子にしてもらうんだ」
ちょっと意外な答えに目を丸くすると、男の子はまた空に目を移す。
「ぼくのママは、ぼくがわるい子だからいつもダメ、ダメっておこるの。ボクはママにわらっててほしいから、いい子になりたいんだ」
「ママはどんなことで怒るの? 何かワケがあるんじゃ」
「よくわかんない。ボクがなんかやりたいって言うとね、それはダメってぜったい言うの」
「なんでも?」
「すなとかどろあそびはダメ、ばいきんがいっぱいだから。公えんのすべり台もシーソーもジャングルジムも、おっこちたらたいへんだからダメ。あとはね、おうちでは絵をかいたり工さくしたりするのもダメ、うちの中がよごれちゃうでしょ。でも、ぼくはわるい子だから、ぜんぶやりたくなっちゃうんだ」
どんだけ神経質な母親なんだろうか。
たしかにそんなんじゃ息がつまって、宇宙人と交信したくなる気持ちもわかる。
「ぼくね、ママのことだいすきだから、ぼくのこときらいにならないでほしいの。だからいい子にかいぞうしてもらわないとダメなんだ」
そう言いながら、少年は再びエイリアンソナーに手を伸ばして、ダンボール製のボタンをぽすぽす叩き出した。
「ぼくがいちばんやりたいことは、ぜったいにママはダメって言うにきまってるし…」
そう言うと、エイリアンソナーの下に手を入れた。
何やら手をがさごそと動かしている。
「それ、何?」
少年が急にあたふたしたので、ずれたダンボールの隙間からピンクっぽい何かが見えた。
小さい腕?
一瞬ちょっとぎょっとしたけど、どうやら人形みたいなものの手らしかった。
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