朝比奈加代子(あさひなかよこ)の遺言状

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ちょっと自分語りをさせてほしい。嫌なら、無視をするのもいいのかもしれない。 自分は一人だった。 いつから一人だったのだろう、もう随分前からかもしれない。 元々社交的でもなければ、積極性も持ち合わせていない。趣味も映画を見る以外、特に際立つ何かはない。 そんな私は高校を卒業してから、地方の零細の食品工場に就職する。二人一組になって、検査をして規格外品をラインから外して出荷していく。 仕事の内容上、長い髪はお局さんから目をつけられやすくなるから、髪は短くして、化粧もほとんどしない。 おしゃれをやめて、友達もほとんど連絡がとれなくなった。もう連絡してなくて7年がたつ。 なら仕事はというと。 「朝比奈さん、またやったの。もう何回目だよ、20回は越えてるんじゃないの。やる気ないなら辞めてもらってもいいんだよ」 「ごめんなさい」 「はあ……もういいから、ちょっと三田村さんこっち入って」と、私の後輩の新人と私が交代する。 「はーい。行きまーす」 「まったく、三田村さんを見習って。三か月で大体あなたと同じことができるんだから」お局さん甲高い声で言った。 とぼとぼと配置を変わる為、移動する。すれ違った三田村さんがボソッとささやく。 「ほんと、いい加減にしてよ。朝比奈さん」 かろうじて覚えた仕事も時々ミスをする。もうベテランと言われても仕方のない職歴なのに。呼吸がうまく吸えなくなる。 なんとかしなきゃと焦って、またミスをする。 ご飯も一人で、職場の人間からは無視されている。だけど、何回か労働基準監督所が工場に入ったおかげで、表向きはいじめてこない。 帰り道が疲れて一人暮らしのアパートに着いたら、ぐったりとベッドにダイブする。両親とは絶縁状態。誰も話し相手がいない。 「なんで生きてるの」ぽつりと明るい電灯の下で私はつぶやく。
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