第一章

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「はーい、山田さん。ちょっと痛いけど我慢してね! ほら、もうすぐだから。う、ん? なかなか抜けないなぁ……ちょっと力いれますよ! それ!」 「ふー。やっと取れたか。今までずっと大人しくしてたのに、ここ数日で急に痛み出すからまいっちゃいましたよ」 スーツ姿の男が、安堵の表情を浮かべた。 「痛かったでしょー? この親知らずはちょっと斜めに生えてて、他の歯を圧迫してましたからね。あ、どうします? 記念に持って帰ります?」 「いや、いいです、いいです。捨てちゃって下さい」 どうやら俺は、社会(歯茎)に出てすぐに、お払い箱になったようだ──
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