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巡り会うもの
「雨なんて降ってないのになぜ傘を差してるの」
「しかもここは室内じゃない。何かしらの宗教とか?」
彼女とは偶然カウンター席で横になった。
「私には空か絶え間なく光の粒が落ちているように見えるのよ。これはそれに当たらないようにしているの」
ほのかに赤みがかった真っ白な髪と淡い衣装に身を包んだ彼女はまるでおとぎ話の天女の様だった。
「光の粒ねえ…」
醉い人の戯言とでもとったのか、彼女は空を仰いだ。
「ふーん……」
そしてなにか閃いたかのように鞄からメモ帳とペンを取り出し綴ってゆく。
「もし、その関係で困ったことがあったらいつでも訪ねてきて。必ず力になれるから」
受け取った紙には住所が書かれていた。それと、
「シンフォニア……?」
「ええ、私の名前よ。おかしな名前でしょう」
彼女、シンフォニアは自身気な表情で笑った。
「絶え間なく降り続ける光の粒ねえ……」
シンファは家に帰ったあとキツイのを飲み直していた。
「あの傘、彼の手のものだったし血縁者か何かしら?」
グラスに残った酒を躊躇なく煽った。
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