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冷蔵庫の扉を開いても、特にどこかへ転送されることはなく。わたしはいくつかの食材を取り出し、また閉めた。
さっと洗ったキノコをまな板に乗せ、包丁でざくざくと刻み、みじん切りにしていく。念入りに細かく刻めば、きっと分からないだろう。
うらやましいものが、ないわけではない。
たとえば、皆が何気なく口にする、うちの子が、というフレーズ。うちの子が、どれほどわがままで、言うことを利かないか、彼らは眉間にしわを寄せて話す。
心底困り果てている、といったその顔が。わたしの目には、幸福のひとつの形に見える。
こどもを持つことを強く望まないひとと結婚したのは、失敗だっただろうかと。時々、そんな思いが頭をよぎる。
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