毒と幸福

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入ってないよ、としれっと返してみる。 しかし、しれっと歴が浅いので、すぐに見破られてしまう。 「入ってるよ」 「エリンギじゃないかな」 「いや、椎茸だって」 「……ちっ、ばれたか」 下っ端の悪党か何かのように悪態を付くと、彼が笑った。 「まあ、これくらいなら食べれるからいいいけど」 なるべく多くの栄養を摂らせるためには、ギリギリを攻めること。それがポイントだ。 「ごめん、これ玉ねぎ多い……」 豚肉の生姜焼きに和えた玉ねぎを指して彼が言う。そちらは基準値を超えてしまっていたらしい。無念だ。 「次は気を付けるよ」 わたしの言葉に彼が、ごめんね、と申し訳なさそうに眉を下げる。
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