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現実世界はこんなにも美しくない。
空気は美味しくない。
やっと来れた。
VRMMOの世界。待ちに待ったVRMMOの世界。
しかしログインが大分遅れてしまい、太陽は傾き始めていた。
現在、プレイヤー名:スージは草原に立っている。
周囲には誰一人としてプレイヤーはいない。
人がいないか、とりあえずスージは歩き始めた。
少し歩くと、林が見えてきた為、とりあえず入る。
どちらにしても今日の寝床が必要だ。
VRの世界でも野宿は嫌だ。スージは強く思っていたのが、その表情から読み取れた。
しばらく木々に囲まれていた林を歩くと、ふいに声が聞こえてくる。
それは女性の叫び声と男の怒鳴り声だ。
プレイヤーがいることに少しの安心感と同時に、その女性の状況に恐怖を抱いた。
すぐ傍の草木に隠れ、顔をひょっこり出し、確認する。
すると、放漫な胸の上に乗った紅いネックレスを光らせ、女性が走ってきた。
スージの目の前を通りすぎようとした途端、あろうことか女性は転んでしまった。
顔面からのフルダイビング。スージはその光景に目を見張った。
「うわぁ、痛そう」
鼻を真っ赤にした女性は立ち上がろうとすると、剣先が首筋に向けて立てられる。
男が追いつめたのだ。
「ふぅ散々手間かけさせやがって」
「えっ、ちょっちょっやめてくださいよ」
女性は立ち上がると、見事なカニ歩きをし、近くの木まで逃げる。
「何が待てだ。こんだけ逃げたんなら十分だろ」
「ほんと、やめてください。私何もしてないじゃないですか」
「違う! 山賊プレイをしてるんだ。ロールプレイング! してるしてないじゃないの!」
「そういうことか、RPGだから演じないといけないのね」
「あぁ、そういうことだ」
すると彼女は納得したと思ったら、みるみるうちに顔色が青ざめていった。
「ってことは、私殺されるの? 始まってそうそう殺されちゃうの?」
「あぁ、そういうことだ」
女性はやっと自分の状況に納得したのか、凄まじい悲鳴を上げた。
「ぎゃああああ、だれかぁあああ、だれかぁあああ、助けてぇぇ」
その凄まじい声に山賊は耳をふさいだ。
もちろん、スージもだ。
そして、スージは、大声で言ってしまうのだ。
「うるせぇええええええ」
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