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透き通った道が真っ直ぐに伸びていた。
世界はどこまでも青く、そして白かった。
遠くから黒い人影がやって来る。〈彼〉は自分と同じ同業者だ。
こんな風に同業者と出会うのは珍しい。
偶然の要因が重なったか、或いは波長が合ったのだろう。
黒いコートに黒いインナー。
金髪碧眼の容貌は、その必要があったからだ。
彼は、金色の髪の小さな男の子を連れていた。
その子のためだとすぐにわかった。
「やあ」
歩みを止めた彼は、まぶしそうに目を細めて頬笑んだ。
実際、まぶしかったんだろう。
足元はラピスラズリを凝縮したような青に満ちていて、僕たちが立っている世界は、雪のような白だったから。
「やあ」
挨拶を返すと、不思議そうな顔で僕を見上げている男の子にも微笑んでみせた。
少し緊張していたらしい男の子は、安心したようににっこりとした。
「僕たちはこれから行くところだけど、君は?」
彼の視線が僕の手元にあるのを知って、僕は頷いた。
「これを」と僕は応えた。
「風の良く通る公園に植えに行くんだ」
「ああ。とてもきれいな苗木だね」
そうとも。と、もう一度頷いた。
僕の手の中には、まだ頼りなく柔らかい、緑の葉をつけた苗木があったからだ。
「じゃあ 。僕たちは行くよ」
彼は道の先に視線を向けた。
僕は頷いた。
歩き始めた彼を見送っていると、男の子が振り返って小さく手を振った。
僕は頷いて手を降り返し、遠くに霞む光を見た。これから彼らはそこへ行く。
いつもと同じ。
変わらない風景だ。
青と白の世界で、手の中の緑だけが鮮やかに色づいていた。
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