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「難しくは無いですよ。ただ、かかりやすい人、かかりにくい人。様々ですから。もちろん、かかりにくい人でも暗示はかけますが、かかりにくい人には何度か通って頂く事になります」
成る程。だから、常連客の人がいるのか。
「具体的にはどんなことをするのですか?」
催眠術そのものが初体験の私は、何か準備がいるのか尋ねてみた。
「そうですね。こちらの準備が必要です。部屋を暗くして、蝋燭を使用しますが、大丈夫ですか?」
私は説明に頷く。暗所恐怖症では無いから暗くされても問題無いし、蝋燭の火も問題無い。
「それから、催眠術にかかって頂くために、リラックスが必要となりますけれど。私を信じて頂きたいのです」
そう言った婦人が何やら艶めいた微笑みを浮かべた。その笑みを見た私は、何故か背筋に悪寒が走る。恐らく、人の顔色を窺って生活をして来た経験から来るのだろう。
本能で危険だ。とシグナルを出している気がした。
「今日、直ぐに始めますか? お金の持ち合わせが無いのですが」
私は然りげ無く切り出す。
「ああ、そうですね。費用は1回1万円ですが」
幸運と言って良いものか、私の財布の中身は5000円だった。
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