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しかし、あの婦人は今までどれだけの人の抱えている失くしたいコトを失くして来ているのだろう。
婦人の失くしたいコトは、誰が失くしてやるのだろう。
ふと、そんな風に思ったが、あの艶めいた笑みを思い出して、左右に首を振った。あの笑みは男女の肉体関係を思わせる。それが信用ならない。普通、客にそんな笑みは見せないし、仮に見せるなら想いが通じ有った相手ではないのか。
それとも婦人は誰でも良いのだろうか?
ごく普通の女性に見えたが、実はソッチ方面の欲が強い女性なのか。しかし、客は異性だけとは限らない。同性相手の場合はどうするのか。同性相手でも構わないのか。
いや、そんな事は気にすることじゃない。
あの喰われそうーーと思った恐怖は忘れよう。もうあの怪しい店には近付かない。悪寒が走ったのは本能だった。その本能で感じた危険は間違いない。
幸い、名前も住所も会社も知られていない。個人情報は一切知らせていないから、大丈夫だろう。
帰ろう。家に。冷や汗が流れた背中の寒さに震えて風邪を引く前に風呂で温まって。そして眠ろう。精神の安定の為にお酒を少し口にして。
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