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「ふふふ。逃げられてしまったわ。あの方はもう来ないわね、きっと」
婦人が逃げ去って行くという表現が似合うくらい勢い良く歩く先程まで此処にいた人物を見送っていた。
「まぁ仕方ないわね。まだああいう本能で行動する人間がいるのね。本能を信じるタイプはダメね。私を信用しないから」
クスクス笑いながら婦人は、次の獲物を待つ。先程まで居た人物は逃げても、他がいる。金も色も婦人の思うがまま。
催眠術で過去を思い出さないようにする。
婦人にそのような事は出来ない。掛かりにくい。と言いさえすれば、馬鹿な人間は引っかかって、何度も足を運ぶ。それだけ金は手に入るし、自分の色欲も満たせる。微笑めば、その気になる人間ばかり。
男も女も関係無い。婦人は、見た目に拘りがあるから。見た目が好みならば、男女の性別など婦人にとって気にならない事だった。
「ふふふ。さぁ次はどんな方がいらっしゃるかしら」
そんな事を呟きながら婦人は、窓の外を見る。また一人、此方を窺う人物が窓越しに見えた。
(了)
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