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「まずはそうですね……。目を閉じて下さい。」
よくわからないが、とりあえず言われた通りに目を閉じる。
「想像してみてください。今ここは見渡す限りの草原です。所々に草花が咲き乱れ、透き通るような青空が広がっていて、心地よい風が吹いています。暖かな日差しがとても気持ちいいです」
草原、草花、青空、心地よい風、暖かな日差し……。キーワードを一つづつ思い描いて行く。何だかいつもより頭の中に鮮明に光景が浮かんでくるような気がする。
ふと、柔らかな風が身体を撫でていく。甘い花の香りがし、ぽかぽかと日を浴びたように身体が暖かい。
「目を開けてくださって結構ですよ。」
「あっ……」
目を開けると想像したとおりの光景が広がっている。先ほどただの白い部屋だったとは思えない。まさに大自然の中にいるようだ。思わず言葉を失ってしまった。
呆気にとられている俺の方を見ながら、女神様が微笑む。長く美しい髪が風に揺れており、一層美しさを引き立てている。
ひとしきり周りを見渡したあと、ふと思いつきしゃがみこんで花を摘み取り嗅いで見る。
「触れるし、匂いも感じる。風も温度も感じることができるなんて……現実なのか?」
バーチャルリアリティの類かと思ったが、全く違うようだ。
「少なくとも、今ここで起きていることは現実ですよ。世界を想像から作り出したのです。もう一つやってみましょう。わたしの目を見てください」
状況を呑み込めていないが、今は言われたことをやって少しでも整理するための材料の得ることが先決か。少し恥ずかしいが、じっと女神様の目を見つめる。
「わたしが、とても幼い頃の姿を想像してみてください。もし小さかったらどんな感じだろうって形で結構ですよ。」
結構な無茶ぶりな気がするぞ。今しがた会ったばかりなのに、小さい頃を想像しろって言われてもなぁ。とりあえずなんとなくで想像してみよう。ふと見つめあっていたはずの女神様が消えた。
「あれ? 女神様? 」
驚いてキョロキョロと周りを見渡す。ふと目線を落とすと、だぼだぼのローブを着たちっこい女神様だと思われるちびっこがいた。
「ちいしゃいとはいいまひたが、ちいしゃすぎまひぇんか?」
幼い、小さいというキーワードを意識しすぎたせいだろうか、些か女神様の想像の上を言ったらしい。今にも泣きそうな顔をしており、心なしか口調も幼い。
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